月のしずく、神秘の水の「ゆの里」では、月のしずくを使った水耕栽培で野菜を育てています。
今回は、プロ・アクティブ堀場が現地まで行って、ゆの里のお料理にも使われているこの畑の野菜たちがどのようにして栽培されているかを直接見てまいりました。
ゆの里のお水だけで野菜を作りたい
ビニールハウスの前に立てられている看板。
5年半も咲き続けた蘭もあったそうです。
訪れる人に安全で美味しい、本来の力のある野菜を食べてもらいたいという重岡社長の願いから始まった「ゆの里畑」。
当初は露地でゆの里のお水を使って栽培していました。無農薬有機栽培で丹精込めて作られた野菜は太陽の光を浴び、濃厚な美味しい野菜に育っています。
でも、何年も栽培を続けているうちに、雨が降ると、野菜に元気がなくなることに気づきました。適度な雨は作物にとって恵みの雨のはず。なのにどうして?雨水よりゆの里のお水の方が、作物たちにとって好ましいお水なのでは?
ゆの里のロビーのランの花々が栄養剤なしで、鉢皿を水浸しにした環境の中で勢いのある花を咲かせ続けていることを見ても、ゆの里のお水だけで野菜を育てたら、もっと力のある美味しい野菜ができるのでは?そう考えた重岡社長と専務は、2008年2月、ゆの里のお水を使った水耕栽培を始めました。
水で発泡スチロールが溶ける!?
自ら説明してくださる重岡専務。
水耕栽培は、水気耕栽培農法を開発・実践しているある企業の協力の元で始まりました。ゆの里での水耕栽培では、専門家も驚きの連続。通常の水耕栽培での常識がことごとく通用しないことを痛感させられているそうです。
普通、水耕栽培では水の上に発泡スチロールのパネルを乗せ、そこに苗を固定します。水耕栽培を始めた当初、野菜が思うように育ちませんでした。水を観察すると、お水の中に白い粉が浮いています。ゆの里のお水は油を溶かす力が強く、発泡スチロールを溶かすほどだったのです。その化学成分が植物に悪影響を与えていたのですね。社長のアイディアで、発泡スチロールの替わりにランの栽培に使うヤシガラチップを敷いてみたところ、それがうまくいきました。
世界初!?水で有機栽培 ~新しい試みのスタート
スタート当初、苗を見守る重岡専務。
一般的に水耕栽培は、安全に効率よく作物を収穫することを最優先しているからでしょうか、形は良くても味に深みがなく、水っぽくて美味しくないという印象があります。ゆの里では、野菜が本来持ついのちのエネルギー溢れる美味しい野菜を作りたいと考え当初から「有機栽培」を目指しています。
自然界では、土の中の微生物が有機物を分解してできた無機化した養分を植物が吸収します。土を使わない水耕栽培では無機物を直接水に溶かし込んで植物に与えるのが常識で、無菌に近い状態を求められる水耕栽培には、有機栽培という考え方はありません。
プロが驚く不思議なお水
さまざまな種類の野菜が育てられています。
水浸しの状態でも腐らない蘭の根元。
技術協力をお願いした専門家が最も驚いたのが、水のpH管理が不要だったこと。水耕栽培では植物の生育に望ましいと言われているpH6の弱酸性を保つよう努めるのですが、ゆの里のお水は何もしなくても常にpH8の弱アルカリ性で安定しているのだそう。本来ならpH8ではまともな生育はできないのです。たとえば水道水を混ぜても、どんな割合にしようと、このpH値が変わらない。それで、植物がぐんぐん育つ。これは水耕栽培のプロの経験から見ても、とても不思議なことだそうです。
また、有機水耕栽培では水の中の酸素は、微生物によって消費され続けるので、常に水を循環させて空気に触れさせて酸素を水に取り込む必要があります。ある時、実験で一つの棚の水の循環を一ヶ月止めてみたところ、普通なら酸素がなくなって水が腐ってしまうはずなのに、不思議なことに水の中の酸素(溶存酸素)の量が減るどころか循環している水より酸素の量が多かったそうです。咲き続けるゆの里のランの花の鉢皿の水も取り替えることがないにも関らず、腐るどころか全く臭いもありません。生き物が側にあるのに腐らない水。生き物に酸素を届け続ける水!まさに、それを証明してくれた実験でした。
pHとは、水素イオン指数または水素イオン濃度指数のことで、ピーエイチ(ピーエッチ)またはペーハーと読み、その物質の酸性、アルカリ性の度合いを表す数値です。pH=7 の場合は中性と呼ばれる。pH値が小さくなればなるほど酸性が強いとされ、逆にpH値が大きくなればなるほどアルカリ性が強いとされます。
土の役割
土と根、そして水。
ところが、有機液肥とゆの里のお水でスタートした苗ですが、去年の春は発芽したばかりの苗の葉の色が薄黄色のものが多くて、なんだか少し弱々しい感じを受けました。水の中のミネラル成分を分析してみると、マンガンが不足していることが分かりました。マンガンは別名「愛のミネラル」。生まれたての赤ちゃんにお母さんが注ぐ愛!?発芽の時に微量ですが特に必要なものなのだそう。ごく普通に土の中に存在しています。そこで土の存在の必要性を感じた重岡専務は、苗の根元に少量の土を敷くことにしました。
すると、どんどんと葉物の色がよくなり、グングンと勢いよく育ち始めました。やはりいのちあるものにとって太陽の光と土、水は必要不可欠なものなのですね。土を水の側に置いても、お水はクリーンなまま、全く濁ることはありませんでした。
虫もいます!
勢いよく伸びゆく葉。
ハウス内では一切消毒をしません。だから、少し目をこらすと、小さな虫たちもちゃんと生息しています。でも、不思議と虫食いの被害や病気は認められません。
ある時、ハウスにアブラムシが大量発生! 殺虫剤を使うなんて、もってのほかなので、アブラムシの天敵のアブラバチを購入して駆除しようと計画した矢先、なぜだか急にアブラムシがいなくなったそうです。よくよく調べてみると、ハウスの中でアブラバチが自然発生していたのです。 ハウスの中で、小さな生態系が出来上がりつつあったのですね。
ハウスに一歩足を踏み入れると、空気がとても澄んでいて、透明感があるのを感じます。水のエネルギーがハウス中に充満しているから?でも土や虫たちがいるからでしょうか、生き物の温かさも同時に感じられます。あぁ、ここで眠りたいなぁ、といつも思ってしまいます。
これこそ天然色! の~びのび育つ
いのちの輝きにあふれた葉。
びっしりと根が広がっています。
葉の色は、透明感のある黄緑。
生命力というのを色で表すと、きっとこんな色なのかしら、と感じさせる美しい色です。よく店頭で見かける葉物野菜の色は、もう少し深緑に近いです。でも、それは肥料を加えるからその色になっているだけなのだそうです。なんだか色が濃い方が栄養素がたっぷりあるような気がしていました。天然の野菜の色を実は知らずに来てしまったのですね。一つ一つの葉っぱが、はちきれんばかりの勢いを持っています。
一方、水の中の根はまさにストレスフリー。
さえぎるものがないので、自由にのびのびと伸びています。色は透明感のある白。農業の専門家、元氣米の長田さんが「これこそが健康な根の色ですよ」と驚いておられました。
根が元気でいられるということは、葉も元気でいられるということ。上と下は相似象なのです。
肥料も手作り
微生物が支える環境。
ぶくぶくと泡立つ手作り液肥。
最初、技術協力をお願いしていた会社の液肥を使っていたのですが、ある時からその液肥を止めてみたら・・・、その方が水の輝き、エネルギーが落ちなくなったと感じたそう。実際に液肥を止めた後にハウスを訪れた時、私も空気感が変わっているのに気づきました。空気がキラキラしているというか、まるで水の中にいるような透明感になっていました。そして、野菜たちは益々元気に育っていったのです。不思議ですね。
よかれと施す液肥がかえって野菜にとってストレスになっていたのでしょうか?なんだか子育てと同じですね。手をかけすぎてもスポイルしてしまう・・・。自然界の法則なのでしょうね、きっと。
現在は、微生物と有機物をタンクに入れて、液肥としています。その有機物の中身は。有機栽培のとうもろこし。ゆの里の料理で使った昆布だしやかつおだしも混ざっています。タンクの中ではボコボコとずっと泡がたって、いのちの営みがそこにあると感じます。微生物の力は偉大ですね。
「いのち」いただきます。
まるで木のように大きく育っています。
試行錯誤を経て、初めての収穫の夏。
大きく育ったトマトはまるで一本の木のようでした。普通は、土の上にゴロゴロとなるかぼちゃやメロンが天井からぶら下がっている様は、壮観!どれもハリがある特大サイズで、元気いっぱいでした。ミズナやアサツキ、クレソン、菊菜など葉野菜も、ちぎってつまみ食いをすると、(一切農薬を使っていないので、洗わなくても大丈夫♪)口の中にぱっと濃厚な香りが広がります。
少量でもお腹もココロも満腹感に満たされます。これこそ、植物のいのちをいただいているんだな、と実感できる味です。
ミズナ、メロン、トマト、カボチャ。それぞれ元気いっぱいです。
みんな、つながっている。
みどりに満ちたハウス内。
この野菜が、いかにも健康に、しっかりとした味と香りを持ち、輝いて美しく育っているのを見ると、植物にとっていい環境、水というのは、同じ生き物の人にとって悪いわけがないな、と素直に思わせてくれます。まさに、いのちを育む水ですね。
ただ、どんなにいいお水があっても、太陽の光、土、風(空気)、虫や微生物、それに毎日心を込めて世話をしてくれる人が必要です。それらがみんなぐるっと手をつないで、一つの世界を作っているのですね。ゆの里のハウスの中では、生態系というサイクルが感じられます。いのちは、つながっているんだなと、思います。